「宝剣」 広島県呉市で、地元にこだわる蔵元
猛暑が続いていますね。そんななか、西日本豪雨で甚大な被害を受けた呉市には、マイベスト10に入る「寳剱」があります。宝剣酒造が大丈夫か心配なのですが、今のところHPにはなにも出ていませんので、大丈夫なのだと思います。
宝剣酒造は呉市の東、仁方というところにあり、1872年創業です。酒蔵にある、広島では稀といわれる湧水「宝剣銘水」を洗米から仕込み水まで使用して醸しています。
そして広島といえば酒米「八反錦」です。広島県にもともとあった在来種「八反草」を改良してできた酒米で、広島の酒蔵はこの八反錦で多く醸しています。秋田にも八反錦がありますが、こちらは栗林酒造「春霞」などで使われています。
その「広島八反錦」を使って醸された「寳剱 純米吟醸 八反錦」は2015年のANAファーストクラスの日本酒に選ばれるほどの出来です。機内酒を選ぶ基準は「安定した量が確保でき、商品にストーリー性があり、しかも美味しい」という3点を重視するということなので、地元産の八反錦を使用することで安定量確保とストーリー性を両立させ、純米吟醸とすることで香りと味のキレも出ている宝剣は、まさに選定のポイントを満足させるものだったと言えます。
「寳剱」を醸す宝剣酒造の土井鉄也氏は43歳という若さで、現在の日本酒を醸すキーパーソンの一人ですから、「愛山」はもちろん、「酒未来」なども高木酒造から使用を許されている蔵のひとつです。ですが土井氏は広島の地元種「八反錦」に強いこだわりをもち、さまざまな精米歩合の「寳剱」を醸しています。そして、最高の食中酒を目指し、値段はリーズナブルです。コスパでいうと最高の銘柄のひとつと言えましょう。
そして、土井氏を始めとする呉市の蔵元が、同じ呉市の農家や市が取り組んだプロジェクトが「呉未希米」です。これは「地元の米で地元に愛される酒を造りたい」との思いから、「八反錦」を呉市で栽培し、「呉未希米八反錦」と名付けられた新しいブランド酒米です。「呉未希米」の名前の由来は「広島・呉の未来と希望」。その米を最初に醸したのは「寳剱」でした。現在では収穫量も増え、「雨後の月」や「華鳩」など呉の蔵元でも醸されています。
そんな地元にこだわる「寳剱」ですから、「雄町」「山田錦」などもいいですが、ぜひ「八反錦」を味わっていただきたいと思います。そして、私も間接的にですが、呉市の復興に一役買いたいと思っています。