「東洋美人」奇跡の新酒

2013年7月28日からまもなく5年となります。

といっても、かなりの酒好きか山口県の方しか思い浮かばないのではないでしょうか。

28日朝から昼過ぎにかけて北部や中部の一部で猛烈な雨となった。須佐(萩市)で 28日12時20分までの3時間に7月の月降水量の平年値(281.6ミリ)を上回る301.5ミリを観測するなど記録的な大雨となった。(萩市公式ホームページより)

今年の西日本豪雨と同じように、5年前に記録的な豪雨で壊滅的な被害を受けたのが「東洋美人」を醸す澄川酒造場です。澄川酒造場は1921年創業、現在は4代目の澄川宜史社長が杜氏も兼務しています。

壊滅的な被害を受けながら2013年末には、奇跡的に残ったわずかな日本酒を他の酒蔵の協力によって出荷することができ、全国の酒蔵や酒販店の方々などの懸命なボランティア活動によって、翌2014年1月には「奇跡の新酒」を出荷できるまでに回復しました。

当時から、かなりのハイレベルな日本酒を醸していましたが、被害をうけたのにもかかわらず適正な価格で販売し続けているという、超良心的な酒蔵と言えます。そのため、現在では入手困難となっています。

私は、「奇跡の新酒」が誕生してから1年後の2015年2月、「東洋美人 原点 直汲み生」を購入しました。写真を見ていただくと、原点の文字の下に「2013.7.28」の文字が。ここからまた歴史が始まるという意思の表れだったのでしょう。

ただならぬ透明感のある、澄んだ甘みがのどをスーっと通っていきます。また、そのエピソードなども思い浮かべると、特別な味わいを感じます。原点はあえて酒米の表示をしていませんでした。それは各地から協力をいただいたという蔵元の感謝を表していたのだと思います。

そして、翌2015年6月には、「原点」から「一歩」進んだということで、「ippo」ブランドが醸されています。当時の裏ラベルには「ippo」と名付けた理由が記されています。

IPPO-原点からの「一歩」-

大きな困難が訪れ、酒造りの原点に立ち戻らせていただきました。

そして今、皆様への感謝の気持ちを胸に、「原点」からの一歩をふみだしていく所存でございます。

「ippo」には酒米の表示もなされるようになっていて、こちらは山田錦ですが、この後は、出羽燦々、雄町、愛山、酒未来など、使用していった酒米は全国に及んでいます。愛山、酒未来は高木酒造に高品質の酒蔵と認められた証ですね。じつは澄川社長は学生時代、山形県の高木酒造で実習。「十四代」を育てた高木顕統専務・杜氏の薫陶を受けた経緯があります。

その後、2016年に来日したプーチン大統領が飲んだのが「東洋美人 壱番纏 純米大吟醸」。山田錦を40%精米した酒です。こちらは飲んだことがありませんが、一国の頭首が飲んだ酒ということで、洞爺湖サミットや伊勢志摩サミットで供された酒と同等と言ってもいいのではないでしょうか。

現在は「ippo」と並行して「東洋美人」そのもの銘柄も復活していて、こちらは灘の白鶴酒造が独自に開発した酒米「白鶴錦」を40%精米で醸した純米大吟醸です。「東洋美人」らしさは残しつつ、スッキリに磨きをかけた感じです。地元にこだわる酒蔵ももちろんいいですが、さまざまな酒米に挑戦していく姿勢も、とても心地いいですね。

被災から立ち直った奇跡の銘柄「東洋美人」。このたび被災された酒蔵にも同じように頑張っていただきたいです。

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