「廣戸川」福島県の酒蔵をリードする技術力

今回は、福島県岩瀬郡天栄村で1892(明治25)年創業の松崎酒造株式会社です。天栄村は東北新幹線の新白河と郡山のちょうど中間にあって、東西に長い村です。その間を釈迦堂川(広戸川)が流れていることで、この「廣戸川」という名が付けられました。もしかしたら「釈迦堂」という酒名だったかもしれません。

その流域にある「桑名邸遺跡」は縄文時代中期を中心とした集落遺跡で、竪穴住居跡37、土坑511基が見つかっています。当然、縄文式土器や石器も見つかっていて、それほど古くから人々が暮らしていた地域ということです。

そんな歴史ある土地で現在、廣戸川を醸す6代目蔵元杜氏・松崎祐行氏は2007年に大学卒業後、実家の蔵に戻り、福島県清酒アカデミー職業能力開発校で酒造りを学んでいました。そんな最中、2011年の東日本大震災で、長年松崎家とともに蔵を守ってきた杜氏が病に倒れ、祐行氏が酒造りを担うことになりました。

そこで醸されたのが「廣戸川」です。地元、天栄村産の酒米「夢の香」をとことん使い、純米、特別純米、純米吟醸から純米大吟醸とさまざまなレベルに挑戦してドメーヌ化を進めています。そのうえで2018年、新しいチャレンジをしてその経験値を「夢の香」に活かすために選んだのが「雄町」です。

「廣戸川 純米吟醸 雄町生」雄町100%使用で50%精米、生酒ですがアルコール度数15度です。初めて雄町を醸したとは思えない味わい。ふわっと広がる香りに甘味、旨味と少しだけ感じる苦み。すばらしい出来です。

そして「廣戸川 純米吟醸 雄町」雄町100%使用で50%精米。2018年11 月製造の新酒です。ラベルだけ見ると同じじゃんという感じですが、こちらは火入れですので、落ち着いた香りと旨味、甘味がしっとりと口の中に広がります。少し慣れた感じですね。二回目でこれはさすが松崎杜氏です。

「5つの蔵が紡ぐ福島県の絆」ということで、「廣戸川」の他に「飛露喜」の廣木酒造、「冩楽」の宮泉銘醸、「ロ万」の花泉酒造、「一歩己」の豊国酒造を紹介しましたが、この中でも松崎杜氏は酒造りの技術に秀でているということで、これら5つの蔵を引っ張り、これからも進化を続けていくと思います。ただ、「夢の香」を呑んでいないので、そこは早めにクリアしておきたいですね。

福島県の日本酒はこれからも要注目です。

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