「三千櫻」愛山のバリエーションが最も多い蔵

 今回は、岐阜県の「三千櫻」です。岐阜県には三千盛、美代櫻など似たような名前があって知名度はそんなにないかもしれません。そんななか、京橋のある店で「三千櫻の会」が開かれたので、行ってまいりました。
 三千櫻酒造は明治初めに四代目山田三千助さんが蔵の権利を買って酒造りを始めたことで「三千櫻」と名付けました。その後、昭和26年1月に会社として設立し、岐阜県中津川市田瀬25番地の名のとおり、後ろには山、正面には田んぼと川がある土地だそうです。現在は、米作りから一貫した手造りの200石ほどの蔵で、山田耕司さんが社長兼杜氏としてがんばっています。
 もともと「三千櫻」を醸していたのですが、現在、山田錦はもう使用していなくて、驚いたのは「愛山」の40%、55%、60%精米に加えて、生酒、火入れというバリエーションがあったのです。社長の山田耕司さんが愛山好きだったらしいのですが、そのせいかいろいろなバリエーションを作っていただき、いろいろ味わうことができました。この場を借りて、感謝申し上げます。写真は40%のもので、国際的な賞でゴールドメダルを獲られたそうです。
 これまで愛山でこれだけのバリエーションは見たことがないうえに、店で燗をつけてもらったので、全部で11パターン(40%は生酒だけだったので)を味わえるという至福を味わいました。 お燗の結論から言いますと、火入れの燗は乳酸感がなく、さっぱりとして、どんな料理にも合う感じでした。生酒のほうは、しっかりと乳酸感があり、それでも後を引かない感じでした。
 他には雄町、五百万石に加えて「きたしずく」。これもなかなか聞いたことがないと思います。「きたしずく」は2014年6月に誕生した北海道の酒米で、雄町の系列です。
 これは、雄町的な甘味が口の中に広がって、飲みこんでしまうとスッと残り香が消えていく感じで、とても好感が持てました。今後が期待されます。
 また、蔵元の山田社長は下戸だそうですが、それなのにこんなバリエーションで酒造りができるのはよほど化学や数学に秀でているのかとおもいましたが、そうではないそうなので(笑)、感覚が優れているのだと言わざるをえません。山田錦を使用していないということで愛山のバリエーションがあったり、他の新しい酒米に挑戦しているのだと思います。
「三千櫻」全体として、酸味や甘味を感じながら、いつまでも口のなかで残っていることはないので、食事の邪魔をしない銘柄だと感じました。
 蔵は岐阜県の中津川にあって、背後には山、周辺には田んぼがあり、「三千櫻」についている桜はないそうです。最寄の中津川駅からはタクシーで6000円くらいかかるということですが、機会があれば訪れてみたい酒蔵です。場所柄、労働人口が少ないようなので、もし酒造りにかかわってみたい方がいたら連絡してみるといいかもしれません。

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