日本酒発祥の地はどこでしょう!?

みなさんは日本酒発祥の地と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか?
パッと思いつくのは灘、伏見、はたまた新潟など酒どころかもしれません。

しかし、日本酒はもともとどぶろくが進化したもので、醸造、濾過技術が発達して現在の澄んだ日本酒になったのは江戸時代も末期と言われています。どぶろく的なものを考えれば、米作が始まっていた邪馬台国、大和朝廷までさかのぼることもできますから、宮崎、大分もしくは三重、奈良あたりが怪しくなりますね。

そのあたりは今後の研究課題とするということで、発祥地には諸説ありますが、実際に「日本清酒発祥の地」という碑が建っているのは奈良県の正暦寺という寺社です。正暦寺は西暦993年に創建された寺で、本来、寺院での酒造りは禁止されていましたが、鎮守や天部の仏へ献上するお酒として、荘園からあがる米を用いて寺院で自家製造していました。

当時の正暦寺では、粥状だった酒を酒粕と液体に分けるということを日本で初めて行い、現在も知られる「三段仕込み」や麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白造り」、酒母の原型である「菩提酛造り」、さらには腐敗を防ぐための火入れ作業など、近代醸造法の基礎となる酒造技術が確立されていました。

室町の時代より造られていた「奈良酒」が全盛期を迎えたのは戦国時代のこと。織田信長もその品質の高さを賞賛したそうです。

荘園、教科書で習いましたね(笑)これらの酒造技術は室町時代を代表する革新的酒造法として、室町時代の古文書『御酒之日記』や江戸時代初期の『童蒙酒造記』にも記されています。実際、ベルギービールなどは修道院の運営費用を稼ぐために造っていたりしますから、日本でもコメを作る荘園を持っていた寺社から発展していったというのもうなずけます。正暦寺のHPです。
http://shoryakuji.jp/sake-birthplace.html
ということで、清酒発祥の地、奈良県の酒をご紹介しましょう。

以前もご紹介している油長酒造の「風の森」です。こちらも歴史が古く、西暦1719年創業。赤穂浪士の討ち入りが1702年、8代将軍吉宗による享保の改革が1716年から始まっています。岡山県産雄町や山田錦だけでなく、奈良県の米「秋津穂」「露葉風」「キヌヒカリ」を近隣農家に契約栽培してもらい、それらを使って自社の敷地内で湧き出ている井戸水で醸している蔵です。この井戸水が、日本酒には合わないとされている超硬水にもかかわらず、すばらしい味わいを醸しだしています。

歴史は古いのですが、技術は最先端。コンピュータ管理されたステンレスタンクで醸造される「風の森」では60~80%の低精米酒、「アルファ風の森」では低アルコール度のものや22%まで精米したものを醸し、それだけではなく、昔ながらの銘柄「鷹長」では、レギュラー酒に加えて上記の正暦寺が年一回造る「菩提酛」を使って醸す。まさに「温故知新」を地で行っている蔵といえます。

(写真)左から、風の森・秋津穂純米しぼり華、風の森・露葉風 純米しぼり華。どちらも65%、70%の低精米。

(写真)風の森 ALPHA TYPE1。アルコール度14度で提供。

地元酒の「鷹長」はまだ飲んだことがありませんが、「風の森」は開栓してすぐは微発泡な味わいが愉しめ、少し経つと本来の酒の味わいが愉しめる2度美味しい日本酒です。購入できる店はなかなかありませんが、非常に良心的な価格設定となっているので、ぜひ試していただきたい銘柄です。

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