「鷹長 菩提もと純米酒」日本酒発祥の地に伝わる製法で醸した酒

今回は奈良県御所市で1719年創業の油長酒造「鷹長 菩提もと純米酒」です。油長酒造は「風の森」で有名ですが、今回は菩提もと造りのお酒ということで地元ブランドの「鷹長」で発売されました。

油長酒造について

西暦1719年創業と簡単に言いますが、赤穂浪士の討ち入りが1702年、8代将軍吉宗による享保の改革が1716年から始まっています。社名の通り、菜種油の精油業者として創業してから造り酒屋に転じて300年です。

歴史は古いのですが、技術は最先端。コンピュータ管理されたステンレスタンクで醸造される「風の森」では60~80%の低精米酒、「アルファ風の森」では低アルコール度のものや22%まで精米したものを醸し、それだけではなく、昔ながらの銘柄「鷹長」ではこの「菩提酛」を使って醸したりと、まさに「温故知新」を地で行っている蔵といえます。

使用米は岡山県産雄町や山田錦だけでなく、奈良県の米「秋津穂」「露葉風」「キヌヒカリ」を近隣農家に契約栽培してもらい、それらを使って自社の敷地内で湧き出ている井戸水で醸しています。この井戸水が、日本酒には合わないとされている超硬水にもかかわらず、すばらしい味わいを醸しだしています。

「菩提もと」について

日本酒発祥の地はどこかという「邪馬台国」のような論争があるなかで、実際に「日本清酒発祥の地」という碑が建っているのは奈良県の正暦寺という寺社です。正暦寺は西暦993年に創建された寺で、本来、寺院での酒造りは禁止されていましたが、鎮守や天部の仏へ献上するお酒として、荘園からあがる米を用いて寺院で自家製造していました。

当時の正暦寺では、粥状だった酒を酒粕と液体に分けるということを日本で初めて行い、現在も知られる「三段仕込み」や麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白造り」、酒母の原型である「菩提酛造り」、さらには腐敗を防ぐための火入れ作業など、近代醸造法の基礎となる酒造技術を確立していきました。

これらの酒造技術は室町時代を代表する革新的酒造法として、室町時代の古文書『御酒之日記』や江戸時代初期の『童蒙酒造記』にも記されています。実際、ベルギービールなどは修道院の運営費用を稼ぐために造っていたりしますから、日本でもコメを作る荘園を持っていた寺社から日本酒造りが発展していったというのもうなずけます。ちなみに正暦寺のHPです。
http://shoryakuji.jp/sake-birthplace.html

その昔ながらの手法に近代醸造法を融合して造られたのがこのお酒です。

「鷹長 菩提もと純米酒」

菩提山町産ヒノヒカリ100%使用で70%精米です。正暦寺の地所で作られた米と水(金剛葛城山系深層地下水、もちろん硬水)、「正暦寺乳酸菌」「正暦寺酵母」を使って造られたお酒です。フルーティとは言い難い、米ぬかのような方向の香りに、口に含んだときは酸っぱいかなと感じるくらいの酸味、そのあと濃厚な米の旨味がどっとやってきます。ですが、酸味があるので、それほど重く感じることなく美味しくいただけます。もちろん透明なお酒ですが、古の人々が呑んだと思われる白濁したお酒の味わいに近いものなのかもしれませんね。

日本酒発祥の地といわれる場所のひとつとして、その地で伝承されている酒造法を継承していく油長酒造第十三代蔵主、山本長兵衛氏の探求心に敬服します。日本酒好きの方には、呑んでおくべきお酒としてオススメします。

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