「磯自慢」日本酒のイメージを変えてくれた最高の酒
今回は、私の人生で最も「日本酒観」を植え付けてくれた酒です。静岡県焼津市で1830(天保元)年創業の磯自慢酒造「磯自慢」。磯自慢酒造の寺岡洋司社長によって、現在人気の「獺祭」「九平次」「新政」「写楽」などのNEO日本酒(こういう呼び方は嫌かもしれませんが)の基礎を造っていただいたといっても過言ではないと私は勝手に思っています。
10年ほど前に一度、磯自慢酒造を訪問させていただいたことがあります。家付き酵母によって品質が左右されるのを防ぐために仕込み蔵がすべてステンレスで作られ、完全な温度管理を行っていると伺いました。また、吟醸酒に醸造アルコールを添加することで味わいにキレが出るというのも磯自慢で知りました。
当時、吟醸、大吟醸に醸造アルコールを添加するというのは暴挙に近いことだったようで、寺岡社長はその批判を味で抑え込んだということですね。美味しい酒は悪酔いしないというのも磯自慢が初めてでした。
ということで、かなり久しぶりに呑んだのが今年の新酒「磯自慢 特別本醸造」です。特別本醸造なのですが、使用米がなんと東条産特等・山田錦(兵庫県特A地区)100%です。麹米55%、掛米60%精米で、醸造アルコールが添加されています。各蔵とも新酒は概して特別純米など安めの酒で出しているものなのですが、こちらは最初から全力投球といった感じです。
酵母は静岡県産のNew‐5酵母(自家培養)、南アルプス間ノ岳と源泉とする大井川の伏流水を使用しています。味わってみると、変わらず、すっきり旨味。やわらかい甘味、控えめで爽やかな吟醸香です。お燗にしてみると、香り控えめですがまろやかな美味しさです。醸造アルコールのちょっとしたトンガリ感がまるでなく、なんでこんなに美味しいのでしょうか?
しばらくごぶさたしてしまっていましたが、出合いがあれば、いつでも飲んでみたい日本酒のマイ・ベストの銘柄です。