「磐城壽」浪江町から山形県に移り醸す酒

今回は福島県双葉郡浪江町で天保年間(1831-1845)に創業の鈴木酒造店です。酒蔵の堤防を挟んだ向こう側は海という立地だったため、2011年の東日本大震災による津波で全建屋が流失、原発の警戒区域となって休業を余儀なくされました。現在は山形県長井市にあった東洋酒造が廃業するということで全株式を取得し、鈴木酒造店長井蔵として日本酒醸造を行っています。

もともとは廻船問屋だったところに、にごり酒の製造許可を得て漁師の酒を醸していたところから、おめでたい名前ということで「磐城壽」と名付けたということです。

その磐城壽の新酒「磐城壽 季造り しぼりたて」。山形県の酒米「出羽燦々」100%使用で65%精米。若干甘味がありますが、アル添のうすにごりなので吞み口や後味がスッキリしています。

もともとは廻船問屋だったところに、にごり酒の製造許可を得て漁師の酒を醸し始めたので、おめでたい名前ということで「磐城壽」と名付けたということです。ラベルには「The Fisherman’s Toast」と書かれていて、「海の男酒」ということらしいですが、have a toast で「乾杯」という意味もありますので、「漁師の大漁祝い酒」という意味もあるのではないでしょうか。

もう一本は「磐城壽 標葉にごり」。福島県の酒米「夢の香」100%使用で55%精米の純米活性濁酒です。浪江町にある標葉(しねは)神社の奉納用の濁酒造りにヒントを得て造った「にごり酒で微発泡」という組み合わせで、スムーズな吞み口なためにとても飲みやすいです。

現在は山形県と福島県両方の蔵元の集まりに参加しており、また、長井蔵の前身である東洋酒造が醸していた「一生幸福」という銘柄も継続して製造しているほど、二つの蔵を大切にしています。創業の地で酒造りを行えない悔しさはあると思いますが、米も山形県、福島県のものを使い、新しい土地で、新しい水で行う酒造りもすべて新たなチャレンジとしてがんばっています。

いつか創業の地で「磐城壽」を醸せるようになるまで、応援していきたいです。

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