愛山の日本酒

突然ですが、今もっとも話題の酒米はなんだと思いますか?
山田錦、雄町、亀の尾、美郷錦、五百万石…… など、数ある酒米がありますが、なかでも「愛山」という銘柄が注目されています。

その「愛山」の歴史をひもといてみましょう。

1941年、兵庫県立明石農業改良実験所で「愛船」と「山雄」という酒米を交配してつくられた「愛山」。
太平洋戦争が始まった年に開発されたということで、意外に歴史がありますが、栽培が難しいといわれる山田錦と比べても粒が大きく、背が高いため、より栽培が難しい銘柄となりました。そのために、一時農業実験所でも試験が中止されるということもあったほどです。

その後、兵庫県の一部の農家と契約した「剣菱酒造」がひっそりと栽培を継続しました。当然ですが剣菱が独占的に愛山を使用した日本酒を醸してきた関係で、他の蔵がこの米を使うことはありませんでした。農家としても他の銘柄を栽培したほうが、この難しい「愛山」を栽培するよりよほど効率がよかったと思いますが、「剣菱」が契約栽培してくれていたおかげで現在に生き残れた銘柄と言っても過言ではないでしょう。

しかし、阪神大震災によって「剣菱酒造」が被災、経営が苦しくなった時に「十四代」の高木酒造が手を差し伸べて「愛山」を使用した酒を造りました。高木酒造は次代の日本酒を担う若手に「愛山」の使用を許し、他の蔵でも使われるようになりました。
「愛山」は溶けにくい酒米と言われており、酒を醸すのにも技術と時間が必要ですが、それだけの味わいが実現できます。
その結果、引き合いが多くなり、生産量は徐々に増えているにもかかわらず、まだまだ高値で取引されているようです。なので、「愛山」の酒は若干高いイメージです……。

ですが、現在は「愛山」を使用したさまざまな日本酒が愉しめる状況となっていることは喜ばしいことです。高木酒造さんに大感謝です。
そこで私が選んだのは、静岡県は土井酒造場の「開運 純米 愛山」。

土井酒造場はこれまで愛山を純米吟醸で醸していましたが、今回は精米歩合を55%に抑えて、濃醇にして上品な味わいが広がる純米酒となりました。甘みのある愛山の個性を出しつつも開運らしい爽やかさも感じられる一本です。
この他にも、私がひいきしている酒蔵で「愛山」が使われています。

福島県の「写楽 純米吟醸 愛山」。

見た目もわかりやすい「栄光富士 愛山」。

そして秋田県、NEXT5の一翼を担う「一白水成 愛山」。
少々値は張りますが、それだけの価値はありますので、みなさんも試してみてください。

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