「ロ万」南会津の米と銘水、人、酵母にこだわる酒
今回は福島県南会津郡で1920(大正9)年創業の花泉酒造「ロ万」です。花泉酒造はもともと「南會醸造」という名前で戦前に「富田正宗」、「伊南川」という日本酒を醸していました。それから戦後の昭和25年頃から「花泉」という名で日本酒を醸したことで平成元年に「花泉酒造」となりました。
仕込水は林野庁によって「水源の森」に指定されている「高清水」を使っています。この水は酒名にもなった伊南川から只見川を経て阿賀野川となって日本海に注がれます。南会津は米どころでもあり、銘水もあるわけですね。
「花泉」は今も造られていますが、東京で見ることはほとんどありません、というか私が見たことがないだけかもしれません。その代わりに2007(平成19)年から醸造を開始した「ロ万」が知られています。
「ロ万」シリーズは5つのこだわりがあります。「米、水、蔵人、酵母、「もち米四段仕込み」」です。
米はもちろん会津産の「五百万石」「夢の香」、水は「高清水」、蔵人は南会津の人、福島県が開発した「うつくしま夢酵母」にもち米「ヒメノモチ」です。米の量や組み合わせを微妙に変えて10種類もの純米吟醸「ロ万」を造っています。
そして11種類目、この11月に呑めるのが「裏ロ万 純米吟醸 一回火入れ」です。ロ万シリーズ10種類のなかから数種をブレンドしている、「上喜元 翁」と同様のセレンディピティです。当然、毎年中身は違いますが、上喜元よりも醸造条件が似ていますので、ブレンドされてもまったく違和感のない仕上がりになっています。
それどころか、ブレンドされたことで旨味、甘味が落ち着いた感じになり、飲み飽きしない味わいになっていますね。ブレンド日本酒入門にはとてもいい一本だと思います。おまけに裏文字ですから、希少なものを手に入れた満足感もありますね(笑)
「日本酒のセレンディピティ」同士で一枚。
少し先になりますが、「ロ万」シリーズのなかから「花見ロ万 純米吟醸 低アルコール一回火入れ」です。こちらは五百万石21%、夢の香72%、ヒメノモチ7%の組み合わせで、アルコール度数13度です。花見の席で軽やかで華やいだ香りの日本酒を飲みたいという方にピッタリです。少し澱もありますので、旨味、甘味にほんのり苦みも感じられると思います。お花見の季節にはオススメの一本です。
福島県はいろいろな酒蔵が協力し合って品質を高める努力をしています。「ロ万」もそのひとつで、これからもさらなる進化を期待しています。