酒の名前に「正宗」が多い理由

今回は、日本酒ネームにありがちな「正宗」についてです。ふるさと納税でもらった日本酒も「山形正宗」ですし、日本で最も有名な酒と言えば「月桂冠」「松竹梅」に加えて「菊正宗」が挙げられるでしょう。ちなみに「菊正宗」は嘉納家の酒蔵なのですが、この嘉納家は柔道の嘉納治五郎を輩出し、有名な灘中学・高校を創設したという家柄です。

それはともかく、一番最初に「正宗」という名前を付けた酒蔵をご存知でしょうか。それが「櫻正宗」なのです。東京ではあまりなじみがないと思いますが、鶯谷にある歴史的居酒屋「鍵屋」さんではこの銘柄を扱っています。では、なぜ「正宗」という名前が流行ったのでしょうか?

櫻正宗株式会社によれば、江戸時代には、灘の酒は「猿若」、「助六」など、俳優の名前を酒の名前に付けるところが多かったようです。 櫻正宗もまた1717年の創業の頃は俳優の名を取って「薪水(しんすい)」という名前にしていました。

天保11年(1840)のある日、かねてより親交のあった山城国深草の「元政庵」住職を訪ねた時、 机の上に置かれていた経典に書かれた「臨済正宗」の文字を見て、「正宗(セイシュウ*)」が「清酒(セイシュ)」に語音が通じる事から、「正宗」と名付けました。最初は「セイシュウ」と読ませるつもりでしたが、 人々は「セイシュウ」ではなく「マサムネ」と読んでしまったため、「マサムネ」が一般の呼び名となりました。

そして「正宗」が灘だけでなく、江戸でも美味しい日本酒の代名詞となったことで、同時代に創業した酒蔵がその名声にあやかろうと、「正宗」を冠していきました。

その証拠に、明治17年(1884)に商標条例施行のときに、櫻正宗は「正宗」だけで登録しようとしましたが、 政府は「正宗」を使用した名前が多い事を理由に「正宗」を普通名詞としてしまい、櫻正宗はしかたなく「正宗」に国花である櫻を付けて「櫻正宗」と名付けたそうです。櫻正宗の「正宗」に使われている書体が同じように使われている日本酒も多く、天保に創業した酒蔵のほかにも、ざっと調べただけでこれくらいありました。

十和田正宗 鳩正宗(青森県)

沖正宗 澤正宗 山形正宗(山形県)

由利政宗(秋田県)、笹正宗(福島県)

楽器正宗(福島県)

朝日正宗 牡丹正宗(茨城県)

国光正宗 十一正宗 雄東正宗(栃木県)

武甲正宗 旭正宗 金大星正宗(埼玉県)

甲子正宗 稲花正宗(千葉県)

丸眞正宗(東京都、残念ながら製造をやめてしまいました)

鮎正宗 お福正宗 スキー正宗 初日正宗 不二正宗(新潟県)

手取川正宗 福正宗(石川県)

羽二重正宗 気比正宗 竹正宗(福井県)

榊正宗 登美正宗 笹正宗 友泉正宗 甲州正宗 開運正宗(山梨県)

姨捨正宗 桂正宗 養老正宗 アルプス正宗 北光正宗(長野県)

達磨正宗 斐太正宗(岐阜県)

白隠正宗(静岡県)

名古屋正宗 酔泉正宗(愛知県)

キンシ正宗(京都府)

浪花正宗(大阪府)

菊正宗 櫻正宗 大黒正宗 千鳥正宗(兵庫県)

三朝正宗(鳥取県)

ヤマサン正宗 簸上(ひかみ)正宗 高正宗(島根県)

三光正宗(岡山県)

菱正宗 三吉正宗(広島県)

山丹正宗(愛媛県)

土陽正宗(高知県)

鷹正宗 ミヨシ正宗(福岡県)

天眞雪正宗(大分県)

薩州正宗(鹿児島県)

正宗のほかにも「錦」や「鶴」、「桜」なども多いと思いますが、これらの由来も研究をしていきたいと思います。

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