「阿武の鶴」34年ぶりに復活したとは思えないレベルの酒
今回は、山口県でも一番新しい、というか古くて新しい阿武の鶴酒造です。山口県阿武市にあるこの蔵は、1983年を最後に蔵での酒造りを休止していました。それを内装デザイナーだった三好隆太郎さんが2017年4月、34年ぶりに酒造りを再開したのです。
阿武の鶴酒造の創業は1897(明治30)年(1915(大正4)年の説もあり)。地元酒として「阿武の鶴」を醸してきましたが、1983年から自社製造をやめて、他の蔵から一樽買いして、自社銘柄として発売するという形になりました。それから2008年に隆太郎さんが会社を辞めて、千葉、埼玉、岐阜、青森の酒蔵で働いた後、実家に戻ったというわけです。
ただ、それですぐに日本酒が造れるというわけではありませんでした。実家の蔵の片づけに忙殺されるなか、「東洋美人」の澄川酒造場、澄川さんがタンクを貸してくれたことで、「阿武の鶴」H27BYを醸すことができました。
その後、新銘柄の「三好」を立ち上げ、地元で作る酒米を使って日本酒を醸しています。平成27年から日本酒製造を本格的に始めたのに、すでに地元の酒米を使って醸しているなど、さすが酒蔵の息子というべきでしょうか。酒造りのセンスがもともとあったのでしょう。
それで、私が呑んだのは「阿武の鶴 Orizuru -おりがらみ- 純米吟醸」。山田錦100%使用の50%精米、純米吟醸です。製造年月が29.2とありますので、H28BYですかね。2017年に自社で製造を開始した前年の澄川酒造場のタンクで出来た分でしょうか。
資料によれば「酒販店様、飲んでくださるお客様へ幸せが訪れますように、千羽鶴の鶴を折りながら願いを込めて付けました。」とあります。酒造りへの姿勢がすばらしいですね。
呑んでみても、短期間で酒造りを始めたレベルではありませんでした。微妙に苦みのあるおりがらみで、フルーティな香り、後味もスッキリと100点満点な味わいです。
「三好」はまだ呑んだことがないので、ぜひレギュラー酒を呑んでみたいと思います。
やはり、そこでその酒蔵の実力がわかりますので。いじわるではありませんよ(笑)
そうそう、山口県といえば何度もお伝えしている「獺祭 島耕作」ですが、昨日地元のイトーヨーカドーに行ったところ酒売り場で売っていて驚きました。値段はというと、2180円。きちんとした酒屋さんでは1200円+税のはずですが、24Hテレビでも寄付を受け付けていたはずなのに、被災地の復興を願って発売されたこの商品になんだかわからない利幅を乗せているのはいかがなものかと思いました。当ブログで2回紹介させていただいた居酒屋で呑んだほうが400円も安い。まあ、いろいろな考え方があるのかもしれませんけど。