「賀儀屋」料理の邪魔をせずに光る酒

今回は愛媛県西条市で1877(明治10)年創業、成龍酒造の「賀儀屋」です。近くにある首藤酒造の「寿喜心」と同じ石鎚山伏流水を使用していて、地元酒は「御代栄」です。酒蔵を始める前は庄屋の米蔵の鍵を預かる仕事をしていたので鍵屋と名乗っていたため、その名前を使って「賀儀屋」としたそうです。酒造りには地元の酒米「松山三井」「しずく媛」を使って、地元の酒を世に広めようと頑張っています。ただ「松山三井」はもともと食米で、だんだんと栽培されなくなってきたために現在は酒米として使われるようになっています。

常務取締役の首藤英友さんの酒造りのモットーは「食に寄りそう酒」。盃からの香りは控えめに、口に含むと香りが広がる酒を醸しています。余談ですが、成龍酒造も首藤(すとう)さんですが、この付近には首藤さんがたくさんいるそうですが、親戚関係ではないそうです。

12月から酒造りに入るということで先日、なじみの店で「賀儀屋の会」が開かれたので参加してきました。なので、紹介するものが大量になっています。

まず一本目は鑑評会出品酒なので山田錦を使っている「伊予賀儀屋 無濾過 大吟醸 原酒 Vintage  瓶火入」。兵庫県産山田錦100%使用で35%精米。2014年に仕込んだ酒を瓶火入れで冷蔵保存しています。vintageにもかかわらず、まったくそれを感じさせないフレッシュさがあります。

「伊予賀儀屋 無濾過 純米 赤ラベル 瓶火入」。愛媛県産松山三井100%使用で60%精米。アルコール度数14度ですいすい行ってしまう危険な酒です。香りも控えめで軽い味わい。

「伊予賀儀屋 無濾過 純米吟醸 黒ラベル 瓶火入」。愛媛県産松山三井100%使用で50%精米。50%精米は大吟醸を名乗ってもいいのですが、こちらでは値段を抑えて幅広い人たちに呑んでほしいとの希望であえて吟醸にしているそうです。ちなみに45%精米から大吟醸を名乗るそうです。

誰にでも薦められる味わいです。香りが足りないということでしたらワイングラスに入れるとちょうどいいかと思います。甘味も絶妙です。

「伊予賀儀屋 無濾過 純米大吟醸 緑ラベル 瓶火入」。愛媛県産しずく媛100%使用で45%精米。45%なので大吟醸です。こちらのコメのほうが米の味がします。お燗にしても乳酸(ヤクルト臭)が立たない大吟醸で、これもすいすい行ってしまいます。

こちらは上と同じラベルですが「伊予賀儀屋 無濾過 純米吟醸 黒ラベル 生原酒」です。生原酒らしくフレッシュな一本です。アルコール度数は17度と高めですが、それを感じさせない呑み心地です。

次は切り絵シリーズ「伊予賀儀屋 無濾過 秋あがり 純米原酒 SEIRYO TSUKIMI」愛媛県産しずく媛100%使用で60%精米。西条市在住で、目に病気を抱える下絵無しの一筆切り絵作家、塩崎剛氏による作品「稲穂」を使ったラベルです。いわゆるひやおろしなので少し甘味が立っていますが、やはり呑みやすい。

そして最後は英友さんの弟、敏孝さんが初めて仕込みに挑戦した酒「伊予賀儀屋 無濾過 責任仕込酒 純米原酒 TOSHI brewed sake」。愛媛県産松山三井100%使用で60%精米。こちらだけ少し味わいが違って、香りも立っていて酸があるタイプです。

蔵では4人で酒を造っていて、瓶火入れもすべて手作業で桶に並べていくそうです。

「料理のわき役であれ」をモットーに醸されている酒なだけに、長く呑んでいける銘柄だと思います。ただ、売っている店が少ないのが玉に瑕です。

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