「御前酒」雄町の未来を造る酒

今回は岡山県真庭市で1804(文化元)年創業、辻本店の「御前酒」です。かつて美作勝山藩御用達の献上酒として使われていたため「御膳酒」と呼ばれ、それが今の酒名になっています。もともと江戸時代から「炭屋」という屋号で呉服商を営んでいましたが、三代目の彌兵衛さんが酒造業を始めました。この方の名前はこの蔵の「炭屋彌兵衛」という日本酒に使われています。

真庭市は岡山県でも県北で、岡山と米子の中間にあり、旭川沿いにあります。原料の米は岡山県産にこだわり、旭川の地下伏流水を仕込水として使用しています。蔵元のある勝山はかつて出雲街道の宿場町として栄え、現在でも蔵の残る街並みが「町並み保存地区」に指定されています。

岡山県といえば「雄町」のお膝元。辻本店では使用米の50%が雄町という「雄町蔵」です。そのため、裏ラベルにも「雄町の未来は、御前酒が醸す」と記されています。

写真は「gozenshu the silence Clean Reverb -在る音-」。もちろん岡山県産雄町100%使用、65%精米。「御前酒」では「雄町」を三つのアプローチから伝えるということで、このsilenceは現代的なアプローチを試みているそうです。味わいとしては酸があり、雄町の甘さ、旨味は控えめです。香りも控えめで、飲み後口はキレがよくスッと消えていく感じです。女性向きなイメージもあります。逆に重い感じがTRADITIONALなんでしょうか。そちらも試してみたいところです。

杜氏は備中杜氏の辻麻衣子さん。2007年に前杜氏の原田巧氏が逝去されたため杜氏となりました。蔵元で育ったことで、地元の酒米「雄町」にこだわりをもったのだと思います。「コクがあって、なおかつキレのよい酒」を引き継ぎながらも、さらに「なめらかさ」を求めているということで、これからも「雄町」に対する新しいアプローチを期待しています。

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