「嘉泉」東京・福生の幻の水で醸す蔵

今回は1822年創業、東京の福生市で「嘉泉」を醸している田村酒造場です。前回の黒牛と同様、福生の旧家のひとつとして田村家があり、その敷地内の井戸に、酒造りに好適な中硬水の秩父奥多摩伏流水が出たことで酒造りにまい進したということです。当時の当主、田村勘次郎さんは、その水が出たことを喜び「嘉泉」と名付けました。ちなみに田村家の当主は代々「半十郎」「十兵衛」「分左衛門」を名乗ってきたそうです。勘次郎さんはその後「半十郎」を名乗られました。

「嘉泉」のラベルには「まぼろしの酒」というフレーズが記されています。昭和48年頃のこと、15代目「田村半十郎」さんが「まぼろしの酒 嘉泉」を産み出しました。当時の級制度で、本来は一級酒となる高精白の本醸造を二級酒として販売したことで「まぼろし」としたのでしょうか。

現在は16代目「田村半十郎」さんが蔵を率いています。その代表作が自らの名を冠した「かねじゅう 田むら」で、かねじゅうとは家印のことです。吟風のほうのラベルの右上にその印がありますね。

「田むら 吟ぎんが 純米吟醸」。岩手県産「吟ぎんが」55%精米で、低温長期醪で醸造、袋取りで瓶燗火入れの一本です。やさしいフルーティな香りにしっとりした旨味の味わいです。

「田むら 吟風 純米吟醸」。北海道産「吟風」55%精米で複数の酵母を使用し、低温長期醪で醸造、瓶燗火入れです。吟ぎんがより香りが高く、スッキリ系の飲み口です。

そして、レギュラー酒はもちろん「嘉泉」。両国駅構内にある東京の日本酒が飲める「東京商店」でもありました。

左は「嘉泉 純米吟醸」。酒造好適米55%精米、低温長期醪で醸した純米吟醸です。右は「嘉泉 特別純米」酒造好適米60%精米。この時は特別純米酒で1位になっていました。飲みやすいお酒ですが、概して東京の日本酒はお燗にしたほうが美味しく飲めるのではないかと感じています。一度試してみたいと思います。

こちらの蔵も10人以上なら蔵見学をさせてもらえるようです。駅では「澤乃井」より立川寄りなので、ほんの少し行きやすいかもしれません。まず呑んでみてから考えてくださいね。

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