「天の戸 夏田冬蔵」酒蔵周辺の材料のみで醸す秋田県の酒
今回は、秋田県横手市で1917(大正6)年創業の浅舞酒造です。主要銘柄は、創業者が「天の岩戸」から採った「天の戸」です。社名となっている浅舞地区には湧水がたくさんあり、染色業にも使われる綺麗な水で、周辺の酒造業、染色業を発展させてきました。その中心にある琵琶沼の伏流水が蔵に湧いた「琵琶沼寒泉」を仕込み水として使用しています。
もちろん酒米造りにも使われていて、浅舞酒造では2011年から蔵から五キロ内の米で、純米酒だけを仕込んでいます。それだけいい米が取れるということですね。そのような米、水を生酛で醸したのが「天の戸 夏田冬蔵」シリーズです。
「天の戸 生酛・純米大吟醸 夏田冬蔵」秋田県産美山錦100%使用で40%精米、自社酵母で醸しています。そしてこちらは2017年2月に搾ったものを低温で瓶貯蔵し、この2月に出荷されています。夏田冬蔵シリーズではこの美山錦だけのようですが、よく熟成されて、ふくよかで力強い味わいで美味しいです。お燗にするとより美味しそうな酸を感じます。
夏は田んぼで酒米を作り、冬は蔵で酒を造る。夏田冬蔵とは、現在の森谷康市杜氏が出版した『夏田冬蔵 新米杜氏の酒造り日記』から来ています。蔵から5キロ内で造られた米を自社湧水で、生酛で醸す。かなり昔は当たり前だったのかもしれませんが、今ではなんと贅沢な一本なのでしょう。そんな一本を味わえることができることに感謝したいと思います。