「一歩己」己の夢を一歩ずつ実現する酒

今回は福島県石川郡古殿町で1841年創業の豊国酒造です。地元では「東豊国」という銘柄を醸しています。福島県には豊国酒造がなぜか2社あり、ひとつはこの「東豊国」、もうひとつは会津にあって、「豊国」という銘柄と醸しています。

福島県は浜通り、会津、中通りと奥羽山脈と阿武隈高地によって分けられているので、以前は他の地域に酒を卸すことがなかったことが同じ社名を付けていた原因だそうで、血縁もないそうです。

ただ現在は「一歩己」という名前のほうが有名かもしれません。私も「一歩己」から呑みましたので。その「東豊国」と「一歩己」を率いているのは31歳の矢内賢正蔵元杜氏。早稲田大学政経学部を卒業した後、豊国酒造に戻り、名人と謳われた簗田博明杜氏に師事。

高齢のため簗田杜氏が引退してからは矢内蔵元杜氏が指揮を執り、「東豊国」は9年連続で鑑評会の金賞を獲得しました。

「一歩己」で己の夢を一歩ずつ実現

「一歩己」は矢内専務が卒業後に蔵に戻った翌2011年から仕込みはじめ、 「主張しすぎない酒」を目指しています。使用米も福島県石川町産の美山錦のみ。これから他の米にもチャレンジしていきたいそうですが、今はオール福島で頑張っています。

「一歩己」のラインナップです。醸造当初は硬い感じがしていましたが、年々味が向上していて、今では自信満々ではないでしょうか。裏ラベルに書かれている言葉がその自信のほどをうかがわせてくれます。

最新の「一歩己 純米吟醸」夢の香を55%精米した純米吟醸です。瓶を持たれているのが矢内蔵元杜氏。

「夢の香」は八反錦と出羽燦々を交配して作った福島県の酒米です。

ラベルには、

「古殿に咲いた夢の香

農家の努力と

作り手の挑戦が

醸しだす最高を。」

とあります。

地元で栽培されたコメを使って最高の味を醸しだした自信作です。味わいはスッキリ旨口で、ずっと飲んでいても飽きない旨さです。そして「無濾過純米生原酒」。まもなく登場する新酒です。美山錦の甘さにうっすらと渋みが感じられる逸品です。

「純米うすにごり」。グレープフルーツのような渋みとリンゴのような旨さがとてもよく味わえます。すぐ無くなってしまう財布に厳しい酒です。

「純米酒」。実はこれが矢内蔵元杜氏の真骨頂ではないでしょうか。通年商品で、購入しても失敗がない、安定した旨さがあります。

うすにごりはラベルの色が違いますが、他の2種は春の息吹を感じさせるうぐいす色。

「一歩己グリーン」と名付けたいですね。

また、それぞれのラベルには、若き杜氏の思いが記されています。その一文から、銘柄にかけた想いをくみ取っていただきたいと思います。

「東豊国 超純米大吟醸」の果てしない旨さ

「一歩己」に力を入れているからといって地元酒「東豊国」は手を抜いているということではありません。

超がつく純米大吟醸。これは旨いです。あるお店の2周年パーティで出されたのですが、超人気蔵を抑えてこれが一番というお客さんがたくさんいました。果てしないと題しましたが、果てしなく飲めそうです。

なかなか見る機会もないかもしれませんが、ぜひ試していただきたい銘柄です。

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