日本酒はなぜ味が違うのか?

日本酒の原料は米と水と麹です。全蔵同じ原料を使っているわけですから、同じ銘柄の米を使うとすると、ふつうに考えれば同じ味になるはず。

しかし、同じ味では勝負ができませんね。

そんなとき、味の変化をもたらすのが米と麹です。

2013年12月、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは記憶に新しいですが、これに一役買っているのが麹(アスペルギルス・オリゼ(日本麹カビ))です。「日本麹カビ」と言われるように、日本にしか生息しておらず、和食の「うまみ」のもととなる、味噌、醤油、みりんなどを作り出すカビです。

日本酒ももちろんこの麹が味を左右します。

麹は全国でも数社しかない種麹(たねこうじ)専門メーカーが製造しています。ちなみに、一時期一世を風靡した漫画「もやしもん」の主人公は種麹メーカーの息子で、この人気のおかげでバイオ関係の企業に進む子供が増えたといいます。

そんな麹ですが、酒蔵のなかには自社で製造している会社もありますが、ほとんどが種麹屋さんから購入しています。また、酒米や麹を活かしてアルコールを生成する酵母菌は、各県にある醸造試験場が品種改良などを行いながら管理しています。

たとえば、有名な「山田錦」は兵庫県の農業試験場で大正12年に開発されたもの。また、新潟県の醸造試験場は都道府県立としては全国で唯一の日本酒専門の試験場で、「越淡麗(こしたんれい)」.「五百万石」といった酒米を共同開発しています。

とくに秋田県の総合食品研究センターでは、平成4年に酒米「あきた酒こまち」といった銘柄を開発するとともに、秋田県の各蔵に古くから住みついているたくさんの微生物の中からお酒の醸造に適した酵母を見つけようというプロジェクトが平成22年から行われています。新政の6号酵母はとても有名ですし、そのなかのひとつが名酒「白瀑(しらたき)」の蔵元、山本合名会社の蔵付き酵母「セクスィー山本酵母」。山本合名会社ならではのネーミングです。

こちらのお酒は「白瀑 純米ひやおろし」。山酛山廃仕込みです。山酛はシャレだと思いますが、そんな楽しい蔵元ですね。

以前にもご紹介した「鳳凰美田」では、このような酵母に加えてワイン酵母を使った商品も出していましたね。さらに長野県の「ソガ・ペール」は1号から9号酵母(8号は無し)を復活させて日本酒を醸しています。

日本酒度については、回を改めてご紹介しますが、とにかくこの蔵付き酵母は気まぐれなところがあり、その年の気候や蔵にまぎれこんだ他の菌によって働き具合が変わってしまうため、酵母によっても、年によっても味の違いが生まれるわけです。

そのため、そのような味のブレを少なく、安定した製品を発売していきたいという蔵もあります。静岡県の「磯自慢」や、愛知県の「醸し人九平次」などは、この蔵付き酵母が付かないようにオールステンレスの醸造場で、醸造試験場で作られた酵母を使って日本酒を作り、高評価を得ていますね。もちろん「獺祭」も完全コンピュータ管理です。

蔵付き酵母はもちろんですが、醸造試験場で作られた酵母も県ごとに異なっていますので、どちらがいいということではなく、美味しければいいわけですから、みなさんもいろいろな土地の日本酒を楽しんでみてください。

 

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