「一夜雫」温暖化で造れなくなった酒
突然ですが、「やるなら今しかねえー」と歌っていた『北の国から』の黒板五郎さんが劇中で飲んでいた日本酒は、シリーズを通して「男山」「北の誉」ともうひとつ、高砂酒造の「黒松 高砂」ということで、北海道の酒蔵の日本酒です。このブログを読んでくださっている方は時代が違うかもしれませんね(笑)
今年は「災害」と言われた猛暑が続いていて、毎日そのニュースがテレビやネットをにぎわしています。それも関係あるかもしれない一例を紹介してみます。
旭川市にある高砂酒造は明治32年創業の小檜山酒造を前身に、昭和28年に設立された酒蔵です。一世を風靡した「国士無双」という銘柄で有名ですが、平成2年から限定で販売開始していた人気商品が「一夜雫」でした。しかし、平成28(2016)年の製造をもって生産中止となってしまいました。
なぜかというと、その製造方法が原因となっていたのです。
「一夜雫」は、かんたんにいうと、アイスドーム(かまくら?)を作って、そのなかで原酒を袋に入れて搾るという酒でした。
アイスドームを造るのは、1月上旬から中旬。大きなビニールをふくらませ、丸二晩その上からノズルで水と雪粉を吹きつけると、表面の氷の厚さはようやく15cm程度に。風船を取り除くと、柱のない氷のドームが出現します。その氷室内は氷点下2℃、湿度90%に保たれ、清酒の酸化を少なくしたり、冷たいままのために香りが立たないので、酒のなかに封じ込めるという効果があり、ゆっくりと搾る”袋搾り”ができるわけでしたが、そのアイスドームが、気候温暖化のために降雪量が減少、平均気温が上昇、などの影響で製作及び維持が困難となったというのです。
大吟醸原酒「一夜雫」
たまたま、一本頂戴することができた「大吟醸原酒 一夜雫」は、ほどよい香りと澄んだ甘さで人気のほどがうかがえる味わいでした。完売前に出会えたことを感謝します。
現在は、また違う製法「雪中貯蔵」を行っているそうです。北海道の酒造好適米「彗星」や「吟風」を使って醸造した酒を、そのまま貯蔵せずにタンクごと野外に運び、雪に埋めて100日間低温熟成させるもので、「大雪」「雪のゆりかご」と名付けられています。
「国士無双」自体は少々ご無沙汰しておりますが、『北の国から』でなんとなく涼しげなイメージもあるので、久しぶりに飲んでみたくなりました。
それにしても、もともと日本酒は暖かい地方で誕生した米を原料とする酒なのに、温暖化によって造れなくなることがあるとはおどろきでした。温暖化が進行してもあまりいいことがないので、進行をくいとめたいと思いました。