「風の森」 日本酒発祥の地で進化する蔵元
今回は日本酒発祥の地で日々進化している日本酒「風の森」です。
もっとも新しい一本は「ALPHA TYPE1 夏の夜空」。ラベルにさそり座が輝く、アルコール度数12%の純米酒です。
「風の森」らしく、微発泡と発泡後の一本で2度楽しめるのはいつもの通りで、若干酸のある爽やかな甘さで度数が軽いため食前酒にピッタリです。旨いです。
ところで、「風の森」を醸す1719年創業の油長酒造の仕込み水は金剛葛城山系深層地下水です。硬度214mg/ℓの超硬水を使用しているのはここだけでしょう。どの製品の裏ラベルにも超硬水使用という旨が記されています。
その水と最新のタンクを使い、奈良県の酒米「秋津穂」、「露葉風」や「愛山」「山田錦」「雄町」などを使って22%から80%という大きな幅のある精米歩合のラインナップを醸しています。
「風の森」のように精米歩合65%~80%という低精米で醸す場合、残った米が多いので溶けるのに時間がかかると思いますが、実際には他の精米歩合の米とあまり変わりなく、30日から32日くらいの発酵期間で醸されています。たとえば写真左から、愛山80と露葉風70、秋津穂65はどれも30日、31日の発酵期間となっています。他の純米大吟醸よりも手が掛かっていると思いますし、旨さもそれに匹敵もしくは上回っていると感じます。しかし、精米歩合で吟醸が名乗れないのは「風の森」にとってウリになるとは思いますが、得なのか損なのか難しいところですね。
●「ALPHA」シリーズ
「ALPHA」シリーズにはそれぞれのテーマに沿ったタイトルが付けられています。
TYPE1は低アルコール度数で世界へとつなぐ「次章への扉」。これは微発泡でのどごしのいいうちになくなってしまうんですよね。
ワインに慣れている外国人が日本酒を飲むには若干度数が高いということで、低アルコール度数の商品が求められるのでしょう。
TYPE2は奈良県産の秋津穂を独創的な技術で22%という高精米で醸した「この上なき華」。こちらも後口がスッキリしているので、あっという間になくなってしまいました。
TYPE3は世界に向けて火入れを行った「世界への架け橋」、これを飲んで「風の森」のすごさと奈良県ではないですが、酒米「八反錦」の底力を感じました。火入れだけに若干落ち着いた感じで飲めますが、すいすい飲めてしまいます。どれも四合瓶ですからあっという間ですね。呑み助泣かせの銘柄です。
TYPE4は独自開発の革新的な日本酒分離技術で醸した「新たなる希望」、TYPE5は「燗SAKEの探求」。名前の通りですが、冷やしても当然美味しいですし、温めてもわずかに残る発泡感がとても心地いいです。
残念ながら、TYPE4だけはまだ飲めていません。いつか巡り合いたいと思います。
●笊籬採り、真中採り
もちろん「ALPHA」シリーズだけでなく、風の森でも新しい技術が開発されています。
笊籬とは訓読みすると「ざる」と「まがき」ですから、いろいろ仕分けするのかと思いましたが、説明書きを読むと違うようです……。
真中採りは他の蔵でもある「中取り」のもっと真ん中なんだと思います。
日本酒発祥の地にふさわしく、地元の米を使うことを大切にしながら、新しい醸造技術に挑戦いていく姿勢には頭が下がります。これからも新しい一本が登場することを楽しみにしています。