醸造用アルコール添加の日本酒は美味しくない?

今回は、微妙にわかりにくい醸造用アルコールの研究です。歴史をさかのぼると、江戸時代の日本酒にも、雑菌の繁殖を防ぐ目的で蒸留アルコールが添加されていたことがわかっています。

もちろん当時の発酵技術では現在ほどのアルコール度数にすることが難しく、度数を高めるために酒粕から作った焼酎(粕取り焼酎)を添加していたようです。

また昭和の戦前、戦中にはコメ不足から、焼酎などを添加して増量していた、いわゆる三増酒があったことが記録に残っています。匂いはアルコールランプの燃料アルコール(エタノール)のようだとも言われていました。

醸造用アルコールも工業用と同じエチルアルコール(エタノール)なのですが、戦後すぐ粕取り焼酎にアルコールを足して増量させていたものが「バクダン」と呼ばれ、飲むと失明すると言われていたのはメチルアルコール(メタノール)で、こちらは人体には毒物です。

30年ほど前には、醸造用アルコールが添加された日本酒は二日酔いがひどいと言われていました。メタノールのせいではないかという風評もありましたが、実際にはエタノールですし飲み口がいいため、大量に飲んでしまったというのが原因だと思われます(笑)

またエタノールは揮発性が高いため、熱燗にすることで若干蒸発します。そのことが、冷やより熱燗のほうが酔わないとか、二日酔いにならないという噂にもつながったのではないかと想像されます。

ということで、現在の醸造用アルコールはいったい何で造っているのでしょうか。

いろいろあるようですが、原料のなかでも下町ハイボールでおなじみのキンミヤ焼酎と同じ、さとうきびの割合が高くなっているようです。

ブラジルなどで自動車の燃料として使われているエタノールもさとうきびやトウモロコシが原料なので、広い意味で醸造用アルコールと同じと言えます。ただ、飲用に使用するには厳しい条件がありますので、安心してください。

そんな醸造用アルコールですが、純米酒に添加することで飲み口が端麗辛口になったり、香りが良くなったりします。個人的には食中酒にはこちらのほうが合っていると思いますし、銘柄が不案内で味も不安なときはアル添を選んでいます。また、夏にはさっぱりした味わいが愉しめます。純米酒に比べて酒質も安定するので、酒蔵経営の安定化にも寄与しているようです。

有名なところでは、静岡県「磯自慢」、愛知県「醸し人九平次」など、キレ味を出すために大吟醸や吟醸酒にアルコール添加しています。この2つの蔵はすべてステンレスタンク仕込みで蔵もステンレスの壁でできており、製造工程をコンピュータ管理した先駆者です。いまでは大蔵元となった「獺祭」はこちらの蔵を参考にしたと言われています。

ちなみに私が好きな銘柄でも醸造アルコールを添加したものがあります。

長野県「川中島幻舞」特別本醸造、山形県「出羽桜」大吟醸 雪漫々、栃木県「鳳凰美田」本吟。どれも香りとキレがあってスッキリ辛口です。

とはいえ、輸出用の日本酒は純米酒が大半となっています。醸造用アルコールが添加されていると混成酒という扱いとなり、税率が高くなってしまうそうです。なので、香り高い吟醸酒、大吟醸酒は日本でしか飲めないと言っても過言ではないかもしれません。ぜひ、お好きな銘柄で純米とアル添を飲み比べていただきたいと思います。

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