「開運」地元の発展を祈って付けられた酒名

ここ2回ほどラベルつながりできましたが、ここで流れを変えて静岡県掛川市の土井酒造場「開運」です。土井家は小貫という土地の名主で、代々庄屋をされていましたが、明治5年に酒造りを始めたそうです。「開運」という名前は地元の発展を祈ってということですが、こんなおめでたい名前が他の酒名につけられていなかったのは不思議ですね。

ところで、酒蔵と書店というのは、意外とその土地の名主が起こす商売のようですね。少し前まで地方の駅前には必ず書店があり、そこのご主人は村長だったり議員さんだったりしたものです。明治維新後、文化の香りがする商売ということで、あまり儲からない書店をお金持ちが商うといった感じだったようです。

話は戻って、土井酒造場といえば能登杜氏四天王の筆頭と称され、1968年から30年務めた杜氏の羽瀬正吉さんが有名でしたが、平成21年、残念ながら逝去されています。杜氏の名前を冠した日本酒は羽瀬杜氏が初めてだったそうで、現在ではその酒名に「伝」が付けられています。

羽瀬杜氏の逝去で全国新酒鑑評会の金賞連続受賞がいったん途絶えたようですが、そのあとを継がれた棒葉農杜氏が率いて、再び平成23年から全国新酒鑑評会の金賞連続受賞が続いています。静岡県の日本酒といえば最新設備の「磯自慢」が有名ですが、「開運」も劣らず最新設備を導入して日本酒を醸しているそうです。当然のごとく水がいいうえに静岡酵母という秘密兵器もありますので、酒質については文句のつけようがありません。逆に辛口になりがちだと思いますが、「開運」の場合はそこを旨口に指向していると思います。

こちらは「開運 無濾過純米 雄町」。岡山産雄町100%使用のにごり酒です。雄町の甘味ににごりの乳酸があいまって飲み口のスッキリしている旨さ。間違いなしです。

そして「開運 純米 愛山」。兵庫県産愛山100%使用55%精米。愛山の香り、硬さ、旨さが静岡酵母によって引き出された逸品です。一回火入れの純米酒。これは旨いです。

 

名杜氏から若き杜氏にバトンタッチして、最新の設備でバックアップしている土井酒造場ですが、今でも特別本醸造「開運祝酒」が最も販売されているようです。古きを温めて、新しきを開発していく酒蔵に期待しています。

 

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