「醸し人九平次」孤高の存在を目指す酒

今回は私の日本酒観を変えた銘柄としては第二弾、愛知県名古屋市で1789(寛政元)年創業の萬乗醸造「醸し人九平次」です。

第二弾というのは、第一弾が静岡県の「磯自慢」だったからです。吟醸酒に醸造アルコールを使用し、オールステンレスで酒を醸すようになった先駆者として有名な「磯自慢」ですが、「醸し人九平次」もその影響を受けて同様な醸し方をしていたという記憶があります。新潟県の「淡麗辛口」とは違い、アル添によって吟醸香が高くなり、フルーティなスッキリ辛口という味わいはそれまでの日本酒観を変えてくれました。それにしても「磯自慢」は富士山の伏流水などがありますが「九平次」はそうはいきません。名古屋市で仕込み水はキビシイ環境だと想像されましたが、あの味わいを造り出した努力と設備投資には頭が下がります。

その仕込み水ですが、萬乗醸造(ばんじょうじょうぞう)主屋・旧精米作業場・瓶詰作業場・元蔵・中蔵・新蔵・白米倉庫・離れ・土蔵・内井戸・旧仕込蔵及び樽修理場・外井戸は国の登録文化財に指定されています。このなかに内井戸、外井戸というのもありますが、現在は仕込み水として使っておらず、長野県との県境まで湧水を汲みに行っているそうです。

そんな「醸し人九平次」ですが、行きつけの矢島酒店で取り扱いが始まりましたので、何年振りかに購入してみました。2009年から全商品純米になっているようなので、10年ぶりくらいかもしれません(汗

基本的には雄町好きなので、山田錦ではなく雄町を選びました。

「醸し人九平次 純米大吟醸 雄町 SAUVAGE」SAUVAGE(ソバージュ)は「野性」を意味します。岡山産雄町の野性味を活かした味わいということですが、栓を開けたとたんに広がる吟醸香がとてもいいです。すかさず一口含むと、甘味、旨味はそれほど強くありません。2杯目は少しおいてから香りをかぐとふわっと甘い香りがひろがります。少し味わいが出てきて、ほんのり甘味、旨味が感じられます。ワインでいう、まだまだ開いていない感じで、これからの味の変化が楽しみになってきました。

以前呑んだときは、醸造アルコールを使用した吟醸香と後味スッキリで完成された美味しさでしたが、今回の一本は時間とともに味わいが変わっていく美味しさになっており、九平次に対するイメージが変わりましたね。

また味わいだけではなく、ラベルのデザインなどもあわせて「美意識 本質 先見性」という佐藤彰洋杜氏が日本酒に求める3つの要素が具現化されたトータルな製品として完成度が高まっていると感じられました。

HPによれば、兵庫県黒田庄での米作り、フランスでのワインのブドウ造りを始め、酒蔵の凝り性な感じがとてもよくわかります。ラベルにも書かれていますが、今夜はワイングラスで愉しんでみたいと思います。

追伸

購入日にワイングラスで呑んだところ、爽やかな甘い香りとスッキリ系の味わい、そして少し苦みが残る感じでしたが、2日目になると開くというんでしょうか。爽やかというより華やかな香りに少しコクのでた甘味、呑み後の苦みは消えていました。保管状態はいつものとおり、一升瓶を四合瓶2本に分け、冷蔵庫で保管です。瓶を移したことで、軽くデキャンタ―ジュのような効果が出たのかもしれませんね。

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