「酒屋八兵衛」幻の酒米「伊勢錦」で醸す酒

今回は、 三重県多気郡大台町で1805(文化2)年創業の元坂酒造です。蔵のすぐそばを清流日本一に選ばれた宮川が流れ、創業者の元坂八兵衛氏の名を冠した「酒屋八兵衛」が主力銘柄です。宮川の川幅が広がる中流域には河岸段丘があり、そこで米作りを行っています。

ちなみに大台町は志摩半島の西にあり、日本でユネスコエコパークに認定されている7つの町のうちのひとつで、世界的に極めて豊かな生態系や生物多様性を有する地域だということです。

「酒屋八兵衛 山廃純米酒 伊勢錦」三重県産伊勢錦100%使用で60%精米です。あえて醸造用乳酸不使用と記されているのは山廃造りに自信を持たれているのだと思います。山廃ですが、軽やかな酸を感じる味わい、香りも穏やかでスッキリと呑みやすいです。2016年の伊勢志摩サミットで食中酒として使われたことでも知られています。

この酒に使われている酒米「伊勢錦」はかつては大量に栽培されていましたが、昭和25年に途絶えてしまいました。幻の酒米はだいたい背が高く倒れやすいという特徴がありますが、この「伊勢錦」もこのような特徴を備えており、幻になってしまったわけです。それを元坂酒造の自社田や契約農家で復活させて醸しているのがこの「酒屋八兵衛 伊勢錦」のドメーヌ・シリーズ(勝手に命名)です。

元坂酒造は熊野古道の沿道にあるということで、歴史を感じる道や酒蔵の建物、河岸段丘の田圃の組み合わせが美しい景観を想像させてくれます。観光で行ったらぜひ立ち寄ってみたいと思います。

 

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