「栄光冨士」清正公の流れを汲む酒

金足農の活躍で秋田県の日本酒が続きましたが、少し南に下りまして山形県の日本酒。私が好きなTOP5に入ります「栄光冨士」です。

「栄光冨士」を醸すのは1778年創業の冨士酒造です。なぜ冨士なのか。静岡と山梨にまたがるのは富士山で、うかんむりとわかんむりの違いがあります。冨士酒造があるのは山形県鶴岡市で、日本海に近いです。近くにある高館山は273メートル、荒倉山は307メートルとそれほど高くありません。なので、日本一の富士山の名を冠しただけなのではないでしょうか? 本当のことがわかりましたら教えてください。

確実なことは、冨士酒造は「賤ケ岳の七本槍」の一人、加藤清正の流れをくむということです。福島正則と同様、関ケ原の戦いでは東軍につき、生前は熊本や大分などを治めていましたが、清正死後3代目の忠広の時代に改易されて出羽庄内藩預かりとなりました。その加藤忠広の女子が冨士酒造の祖となって、現在の13代加藤有慶社長に至ります。

個人的にはラベルデザインが秀逸で、地元酒の冨士もカッコいいと思います。下の写真は東京でよく見られる季節限定醸造のラベルですが、外国人にウケがいいラベルだと思いますね。なにせ「Glorious Mt.Fuji」ですから。使用米も大きくてわかりやすいです。

上から出羽燦々「純米大吟醸 無濾過生原酒 春酒 煌凛」、愛山も「Love Mountain」となっていますが「純米大吟醸 無濾過生原酒 愛山2017」。2016年にワインの格付けで有名なロバート・パーカーのパーカーポイントで92点を獲得しました。非常に綺麗で澄んだ甘さと酸がみごとな割合で供されます。そして2018年の「純米大吟醸 無濾過生原酒 雄町」、旨味が際立っています。そして明治時代の3大酒米だった「愛国」「亀の尾」ともうひとつ幻の米「神力」100%の「純米大吟醸 無濾過生原酒 新 天賚」です。

 

酒米の「神力」は兵庫県を発祥として明治・大正時代には日本を代表する酒米でしたが、徐々に病気に弱くなっていき世代交代がなされて栽培されなくなっていましたが、平成5年から残っていた種子を使って復活の試みがなされ始めました。翌年には熊本県でみごとな穂を実らせましたが、美少年酒造での酒造りにはその翌7年までかかりました。平成9年から全国に販売を始めたようで、この栄光冨士は平成29年の収穫でしょうか。少し重厚な味わいが感じられました。

行きつけの店の2周年パーティで隣席にいらした洒落た着物を召した老紳士は「好きな日本酒が3つある。ひとつは栄光冨士だ」とおっしゃっていました。他の2つは教えていただけませんでしたが、私もいつか3つに絞り込んでいきたいと思います。もちろん「栄光冨士」はその候補のひとつです。

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