「新政」秋田の日本酒をリードするNEXT5のエース

今回は秋田県を代表する酒蔵、新政酒造をご紹介します。現在の日本酒ブームを体現していると言っても過言ではない、1852年創業、166年目の老舗です。

何を体現しているかというと、さまざまな酒米を使って多品種少量生産を行っており、さらに一般向けには、多くの人に飲んでもらいたいと、全商品を四合瓶にすることでそれを可能にし、収益面でも効率化を図っているというところです。ただ、それでも人気がありすぎて、なかなか買うことができません。

新政で発見された「6号酵母」

秋田県と言えば「NEXT5」という酒蔵間の協力体制が出来上がっていますが、その中心となっているのが新政の蔵で発見された「6号酵母(別名・新政酵母)」です。昭和10年に日本醸造協会より「きょうかい六号酵母」として発売され、現在市販されている酵母の中では最古のものです。新政酒造ではすべての商品でこの酵母が使われており、さわやかな甘みを持つ味わいが男性だけでなく多くの女性ファンをうならせています。

写真は6号酵母がそのまま商品名になった「No.6 R-type」。秋田県産の酒米を生酛純米づくりで6号酵母を使って醸しています。シリアルナンバー付きです。

社長の佐藤祐輔氏は1974年生まれの44歳。東京大学を卒業し、ライター・編集者をしていたとのことで、多くの若手蔵元と同様に「磯自慢」、「醸し人九平次」などの銘酒に感銘を受けて実家を継ぐことを決意しました。

研究オタク的な性格なのか、数多くの実験的な商品を次々と発売し、ラベルも日本酒らしくないものが採用されています。

使用米ごとにラピス、ヴィリジアン、エクリュなどの、こちらも日本酒らしくないネーミングをつけたり、新政酒造の初代・佐藤卯兵衛の名にちなんだ屋号「やまう」をもじった「ヤマユ」や、≪酒をもって酒を仕込む≫という平安時代にその源流を持つ最も古い清酒醸造法による貴醸酒の「陽乃鳥」、通常、黄麹が使われる日本酒ですが、主に焼酎に使われる白麹を使って仕込んだ「亜麻猫」など、これでもかといった具合にチャレンジャブルな製品が登場しています。

写真は「異端教祖株式会社」という名前です。酒米「あきた酒こまち」を30%精米で醸した逸品。ワインのようなコルク栓で提供されており、製品名は20世紀初頭のパリで活躍したシュールレアリスムの詩人ギヨーム・アポリネールの著書に由来しています。焼酎で有名な黒木酒造「百年の孤独」もノーベル賞作家ガルシア・マルケスの小説から名付けたようですが、お二人ともインテリですね(汗

作品をイメージした味わいなのだと思いますが、新政は少し酸味がありますので、これが日本酒のシュールレアリスムなのだと思って味わいました。

さらに実験的な新製品は年間契約の「新政頒布会」に配されています。人数限定ではありますが、年一回募集がありますので、参加できるならしたいものです。写真は2015年度頒布会の「純米 美山錦」。

もちろん、地元用には従来からの「新政」が販売されています。こちらは意外と東京では見かけませんね。子供のころはCMをやっていたような記憶がありますが・・・。

これまでのお客さんはもちろん、新しいお客さんの期待も裏切らない「新政」に、今後も期待しています。

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