「天吹」花酵母で華やぐ佐賀の酒

今回は佐賀県三養基（みやき）郡で元禄年間（1688年～1704年）に創業の天吹酒造「天吹」です。三養基郡は佐賀県と福岡県の県境にある鳥栖市の隣ですが、ほとんど福岡県で南は久留米市に隣接しています。近くには筑後川が流れ、吉野ケ里遺跡もあるので古くから稲作が行われていたところです。背振天山の伏流水を仕込み水に使い、300年もの間、酒を醸しています。

「天吹」で特徴的なのは、花の中から分離された花酵母を使っていることです。花酵母は、東京農大短期大学部醸造学科酒類学研究室の中田久保教授が世界で初めて花の蜜から酵母を分離して誕生させたものだそうです。フルーティでキレのあるアベリア、ベゴニアや、バナナのように甘い香りのシャクナゲ、お燗にぴったりのマリーゴールドなど、東京農大花酵母研究会加盟蔵のみが使用を許されています。

現社長の木下壮太郎氏が東京農大で中田教授に師事して「なでしこ酵母」に出会ったことが花酵母を使用するきっかけとなりました。こちらは通常商品の「天吹　大吟醸　冬色」。佐賀県産夢しずく100％使用の40％精米で「ベゴニア酵母」を使っています。が、これから発売の新酒は「オシロイバナ酵母」を使用しています。酵母によって味が変わる「花酵母」。ラベルのタイルの色の組み合わせも違っているようでおもしろいですね。