「仙禽」酒米ドメーヌ化と超古代製法に挑戦する蔵

今回は、これまであまり手をつけてこなかった栃木県の日本酒です。意外というのもなんですが、栃木県は日本酒蔵が非常に多いです。特に今の日本酒ブームに乗っている蔵が多い。「仙禽」もそのうちのひとつです。

「仙禽」を醸す株式会社せんきんは栃木県さくら市(2005年に塩谷郡氏家町・喜連川町が合併)で1806(文化3)年創業。現在の蔵元である薄井一樹さんのこだわりから、昔ながらの生酛造りで、かつ、さくら市でも蔵の地下水と同じ水脈上に限定して作付けされた米(ドメーヌ・さくら)で醸すドメーヌ蔵です。ドメーヌとはワイン用語で、ブドウの作付から瓶詰まで一貫して行っている蔵のことを指します。

さくら市で作っている酒米は「亀ノ尾」「山田錦」「雄町」。とくに「亀の尾」は幻の酒米として、漫画『夏子の酒』となったほどですが、山田錦や雄町に比べ、歴史は古くからあります。その「亀ノ尾」の「原原種」から育てたさくら市の亀の尾で醸したのが「モダン仙禽 生酛 亀の尾」。さくら市産亀の尾50%精米と麹米に山田錦40%精米を使用。これは無濾過生原酒の中取りです。

香り高く、味わいも固めから柔らかくなっていく流れを愉しむためにブルゴーニュ型ワイングラス(下が丸く大きく口がすぼまっている型)が推奨されています。ラベルは「仙禽」の名前のもととなった仙界に棲む「鶴」をイメージしています。

下のシンプルな「仙禽」のラベルは「クラシック仙禽 無垢」。さくら市産ドメーヌさくら・山田錦100%。麹米40%精米、掛米50%精米の無濾過原酒・瓶囲い瓶火入れです。29BYで、すべての原料米がドメーヌ化となりました。

「仙禽」の中で最もオーソドックスな製品がこの「無垢」で、そのなかでも山田錦が基本です。フルーティな香りに酸を感じる甘味がいいですね。

さらに薄井蔵元は「仙禽」の個性である生酛造りを極めるために、酵母無添加(蔵付き酵母)、木桶仕込み、生もと酒母、古代米使用(亀ノ尾)、磨かない米(精米機が存在しなかったかつての醸造方式を再現するため、精米歩合は90%以上)であることが前提の超古代製法で「仙禽ナチュール」シリーズに挑戦。協会酵母で乳酸を添加した速醸が普通になっている昨今、考えただけでも相当な困難さが想像されます。

このシリーズはUn(1)からcinq(5)までありますが、まだ呑めていません。売り切れている店が多いと思いますが、機会があれば試してみたいと思います。

この製法が極められると、まさに「仙禽」というブランドが確立されますね。若手の蔵元は他の蔵との差別化を考えている方が多いので、呑む側としてもそのチャレンジを応援したいです。これからの「仙禽」を愉しみにしています。

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