「くどき上手」浮世絵ラベルが目印のオール吟醸蔵

秋田から山形におりてきましたので、今回も冨士酒造と同じ山形県鶴岡市にある1875年創業の亀の井酒造です。

亀の井酒造というより「くどき上手」のほうがわかりやすいかもしれません。創業以来「亀の井」という日本酒を醸してきたのですが、五代目社長今井俊治氏が1985(昭和60)年、浮世絵美人をラベルに採用した全量吟醸仕込みの「くどき上手」を発売し、全国的な人気銘柄となりました。使用する酵母は10号酵母とM310酵母です。10号酵母は、茨城県出身で仙台国税局鑑定官室長を務めた小川知可良博士によって東北各地の酒蔵から集めた酵母のなかから選びぬかれたものです。香り高く酸が少ない酒ができるという特徴があります。

小川博士は茨城県の明利酒類という会社の副社長をしていましたが、今井社長はそこで修行をしていたので、10号酵母に長けているのでしょう。またM310酵母は同じく明利酒類で10号酵母を変異させたもので、香り高い酒ができるという特徴があります。

「くどき上手」といえば、有名な浮世絵ラベルはこんな感じです。

こちらは伊勢錦100%の「純米大吟醸 くどき上手」。伊勢錦はもちろん三重県の酒米で、背が高く穂が大きい、昔の酒米です。山田錦の親の「山田穂」の親と言われているので、相当な酒造好適米ですね。現在は栽培のしにくさから収穫量が少なく「幻の酒米」となっています。10号酵母によるフルーティな辛口でキレのある旨さです。

こちらも幻の酒米「改良新交」100%の「純米大吟醸 スーパーくどき上手」。「改良新交」という酒米は「亀の尾」を祖先にもつ「たかね錦」を改良したものです。「たかね錦」は「五百万石」と兄弟みたいなものですので、「五百万石」の甥ということになります。ある時期秋田県など数多くの日本酒を席巻しましたが「伊勢錦」と同様、背が高いので栽培しにくく、今ではほとんど栽培されていません。日本酒界も多品種少量時代に入っていますので、わずかでも収穫できればいいわけですね。

こちらは出羽燦々をなんと22%精米で醸した「純米大吟醸 くどき上手 穀潰し」。「ごくつぶし」とは「飯を食うだけで何のはたらきもない人」のことですが、こちらでは「78%も米を削って無駄遣いしてしまっていること」を意味しているようです。ですが、こんなにおいしい酒が飲めるのなら、それでもいいのではないでしょうか(笑) M310酵母で香り高く、澄み切った味わいです。

兵庫県産山田錦を45%精米の「純米大吟醸 くどき上手 Luxury ~生意気な大人味~」。裏ラベルには「山形県の開発酵母、多酸性生成酵母、苦み成分、特許料、高級品種 山田錦(特A地区)使用。いろんなことを想像して味わう楽しみ」とあります。

蔵元的に名づけた「くどき上手」とは女性を口説くということではないようですが、いろんなことを想像しながら酒を酌み交わすと、男女問わず口説けてしまうのかもしれません。

 

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