「風の森 ALPHA6 6号への敬意2022」6号酵母で醸す唯一の風の森

今回は奈良県御所市で1719年創業の油長酒造「風の森 ALPHA6 6号への敬意2022」です。

油長酒造について

西暦1719年創業と簡単に言いますが、赤穂浪士の討ち入りが1702年、8代将軍吉宗による享保の改革が1716年から始まっています。社名の通り、菜種油の精油業者として創業してから造り酒屋に転じて300年です。

歴史は古いのですが、技術は最先端。コンピュータ管理されたステンレスタンクで醸造される「風の森」では60~80%の低精米酒、「アルファ風の森」では低アルコール度のものや22%まで精米したものを醸し、それだけではなく、昔ながらの銘柄「鷹長」ではこの「菩提酛」を使って醸したりと、まさに「温故知新」を地で行っている蔵といえます。

使用米は岡山県産雄町や山田錦だけでなく、奈良県の米「秋津穂」「露葉風」「キヌヒカリ」を近隣農家に契約栽培してもらい、それらを使って自社の敷地内で湧き出ている井戸水で醸しています。この井戸水が、日本酒には合わないとされている超硬水にもかかわらず、すばらしい味わいを醸しだしています。また、風の森は初期の頃、多種多様な酵母でお酒造りを行いましたが、目指す酒質と風の森の仕込水との相性を考え、最適な酵母は7号酵母という結論に至り、以来20年近く、7号酵母のみで醸してきました。

「菩提もと」について

日本酒発祥の地はどこかという「邪馬台国」のような論争があるなかで、実際に「日本清酒発祥の地」という碑が建っているのは奈良県の正暦寺という寺社です。正暦寺は西暦993年に創建された寺で、本来、寺院での酒造りは禁止されていましたが、鎮守や天部の仏へ献上するお酒として、荘園からあがる米を用いて寺院で自家製造していました。

当時の正暦寺では、粥状だった酒を酒粕と液体に分けるということを日本で初めて行い、現在も知られる「三段仕込み」や麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白造り」、酒母の原型である「菩提酛造り」、さらには腐敗を防ぐための火入れ作業など、近代醸造法の基礎となる酒造技術を確立していきました。

これらの酒造技術は室町時代を代表する革新的酒造法として、室町時代の古文書『御酒之日記』や江戸時代初期の『童蒙酒造記』にも記されています。実際、ベルギービールなどは修道院の運営費用を稼ぐために造っていたりしますから、日本でもコメを作る荘園を持っていた寺社から日本酒造りが発展していったというのもうなずけます。ちなみに正暦寺のHPです。
http://shoryakuji.jp/sake-birthplace.html

「風の森 ALPHA6 6号への敬意2022」

7号酵母発見の16年前、6号酵母は1930年国税庁技術者 小穴富司雄氏の手により、秋田の銘酒新政を醸す酒蔵から発見されました。それ以降に発見された協会酵母の親であり、全て遺伝的に6号の突然変異であることが判明しています。低温発酵力の強い6号酵母は風の森との相性も良いのではないかとずっと思いを募らせていて、昨年から新政の佐藤杜氏の協力をえて醸し始めたのがこの「ALPHA6」です。

奈良県産秋津穂100%使用で66%精米です。ガラスのとっくり全体に泡がつくくらいの割と強めなガス感、酸強めと思いきや旨み由来の甘みもあり、大人のサイダーといった感があり美味しいです。キレはもちろん良く、すっきりとしています。

 

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