「糀善」勝海舟が逗留した佐原の酒蔵

今回は前回に引き続き、佐原の酒蔵見学第2弾です。東薫酒造に行く途中の道沿いにある馬場本店酒造です。レンガ造りの煙突が青空に映えています。こちらの酒蔵は東薫酒造より古く1681~1683(天和年間)年に糀屋として創業、糀を扱うということで、1842(天保13)年に酒造りを始め、みりん、しょうゆの醸造と製品を増やしていきました。日本酒の主力銘柄は「佐原ばやし」「糀善」「海舟散人」です。

こちらは途中までですが、自由に敷地内に入ることができ、倉庫跡にパネルで歴史の展示とかつて使用されていた用具が展示されています。酒樽に銘柄を押していた焼き印など、興味深い品が間近で見られます。

ところで「海舟散人」ですが、幕末から明治にかけての佐原は海運の中継地としてとても栄えていました。利根川流域の穀倉地帯で、米、みそ、しょうゆ、日本酒の醸造業が酒蔵が30以上あったといいますから、豪商がたくさんいたわけです。そこに勝海舟はお金の無心に来たそうですが、そのときに逗留したのがこの馬場本店でした。講演や自署で現在で約10億円ものお金をひと月で集めたそうです。どおりで勝海舟の書はたいへん多く流通しているわけですね。

その書から名付けた「海舟散人」は山田錦を35%精米ですので、少々お高いこともあり、購入したのは馬場本店酒造最古の銘柄「糀善 本醸造」です。麹米65%(長野県産美山錦)、掛米65%(滋賀県産みつひかり)で醸造アルコールを添加しています。こちらもてっきりアルコール感満点かと思いきや、旨味、辛口なのに甘味が感じられ、後口はスッキリと当たり銘柄でした。美山錦を使用しているのは意外でした。

千葉県の酒蔵、東薫酒造、馬場本店酒造ともにあなどれません。なかなか東京では見ることがないので、佐原観光の密かなお楽しみということでオススメです。佐原は「小江戸」と呼ばれていて、蔵造りの町並みを愉しんだあとは美味しいうなぎ屋さんやお蕎麦屋さんで一日過ごすのもいいのではないでしょうか。

小ネタですが、川越も「小江戸」と呼ばれて有名ですが、実は佐原のほうが先に大火にやられ、焼け残ったのが蔵造りの家だったことで、周囲も蔵造りにして現在の町並みになっています。川越もその後大火でやられて同じように蔵造りの町並みが残ったわけですが、PRの力なのか、交通の便の良さなのか、観光客が大挙して訪れています。個人的には佐原のほうが川があって風情が感じられるので好きなんですけどね。

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