「悦凱陣」こんぴらさんのお膝元で醸す酒

初めて「悦凱陣」を呑んだのは、「恐るべきさぬきうどん」の田尾さんとエッセイストの勝谷誠彦さんが組んで、西新宿に「麺通団」一号店を開いたときでした。まさに「さぬきうどん」ブーム真っただ中で、金陵、綾菊などに比べて一段高価でした。

現在でも、私が東京一のさぬきうどん店と思っている赤羽の「すみた」では、金陵、川鶴などとともに扱っています。酒屋で見たことがないので、「すみた」が一番呑みやすいかもしれません。神田の「野らぼー」にはなかったような気がします。

そんな「悦凱陣」ですが、香川県仲多度郡琴平町で1885年創業の丸尾本店が醸しています。空海ゆかりの満濃水系の伏流水を使って木製の甑と和釜を使用する少量生産のため、東京では購入が難しい銘柄となっていますね。

今回呑めたのは「悦凱陣 純米吟醸 黒澤亀の尾仕込21,22号 むろか生」。宮城県産亀の尾100%の50%精米です。亀の尾らしい、少し硬めの甘さでほのかな香り、後味スッキリという味わいです。

ところで「黒澤亀の尾」ということですが、もともと高い「亀の尾」の中でもブランド米として名高い逸品となっています。

名前にある「黒澤」とは宮城県遠田郡涌谷町にある黒澤農場のこと。なので「宮城県産亀の尾」なわけです。少人数で現在12品種の米を作っています。化学合成農薬や化学合成肥料を使わない自然農法で手間暇かけて作るため、黒澤農場産の米はブランドとなっているわけです。

「悦凱陣」は、丸尾忠興杜氏が使いたい酒米を使うということで、この黒澤銘柄に行きついたのだと思いますが、この「亀の尾」は旨いですね。少々お高いようですが、値段に見合った品質だと思います。しかし「悦凱陣」には産地の違う「亀の尾」を使った製品が4つもあります。花巻、海老名、遠野、そして黒澤です。黒澤だけ人名ですが、神奈川県の海老名で「亀の尾」を作っているんですかね。海老名市では「山田錦」も作っていますし、「えびな錦」という米もあるようなので、作っていても不思議ではありませんね。

願わくばもう少し東京で流通してくれると嬉しいのですが、こだわりの製造法を続ける限り、それは無理なのかもしれません。それが「悦凱陣」の味を落とさない方法なのであれば、またいつか巡り合うのを待つのも一興です。