「喜平」静岡県にルーツを持つ岡山県の酒
今回は、岡山県浅口市鴨方町にある平喜酒造です。創業年を記さなかったのは、平喜酒造の主力銘柄である「喜平」が岡山県と静岡県にあるためなのですが、調べてみると明治初頭、静岡にあった「平島屋」という米穀商が掛川市で酒造業を始め、静岡市内から各地に分散していきました。それを1967(昭和42)年に岡山県に集約して出来たのが平喜酒造というわけです。「喜平」のほか「新婚」「将軍」が主力銘柄です。
静岡に残った会社は酒卸商の平喜商店として「喜平」を販売していましたが、2012(平成24)年、静岡平喜酒造を立ち上げ、やはり同じ名前の日本酒「喜平」を醸しています。
複雑な感じですが、今回は岡山の平喜酒造のほうです。岡山に移ったのは米どころだからということなんでしょうか。浅口市は赤磐雄町、備前雄町の岡山市とはかなり離れていますが、広島県寄りの海岸沿いにあります。雄町も手に入れやすい土地であることは間違いないと思います。
そんな平喜酒造の「喜平」ですが、神田にある岡山料理の店で味わうことができました。岡山県の酒って、出合うことがあまりないんですよね。この店には「喜平」しか置いていないので、本醸造から特別純米、純米吟醸に別誂まで4種類味わいました。
ここでご紹介するのは「純米吟醸 喜平 曙乃郷」。岡山県産あけぼの100%使用で50%精米、とても綺麗に澄んだお酒で、フルーティな香り、酸はありませんが、旨味があってキレもあり美味しいです。
酒米の「あけぼの」は、「コシヒカリ」「ササニシキ」「あきたこまち」などのルーツ米である「朝日」と農林12号を掛け合わせた岡山県の米で、酒米のほか寿司米としても使われています。食べて美味しい米で日本酒も美味しいのは「あきたこまち」「亀の尾」もそうですね。
そして「別誂 喜平純米吟醸 無濾過 生原酒」岡山県産雄町100%使用で60%精米。表ラベルはなく、裏ラベルのみになっています。流通していないのでしょうか。これは無濾過なのですが綺麗に澄んでいて、すばらしい吟醸香に雄町らしい甘味、旨味があってキレもバツグンの美味しい酒でした。これは若干お高いのですが、それだけの価値はありましたね。
雄町の産地でありながら、意外と出合うことのない岡山県の日本酒。「喜平」に出合えたことで、隠れた逸品がまだまだありそうな予感がします。